無償労働で遊ぶことのすすめ (2015年04月20日)
僕はけっこう無償労働をして遊んでいることが多い。ニコニコ学会にしてもMakerFaireシンガポールや深圳の運営にしても、誰かがそれで給料をくれるわけじゃない。むしろ持ち出しになる。
前回ブログに書いたISACハッカソンも、プロジェクトも成果物も発生したけど、もちろん給料は発生しない。
別に誰かのためでなくて、自分のためにやっているから、ボランティア、奉仕と呼ばれるのはちょっとしっくりこない。とりあえずここでは無償労働と呼ぼう。
自発的に行われているイベントの運営に携わると、たいていものすごく人手不足になっている。ホームページを作る人もつぶやく人も会場予約をする人も受付をやる人も足りない。いくらでも「やったほうがいいこと」がみつかる。イベントのプロみたいにきちんと仕事ができなくても、ゼロをそうじゃない状態にしただけで十分効果がある。たとえば雑居ビルのイベントで、エレベータの中で「ハッカソン会場は6Fです」って手書きした紙を貼るとか、twitterで実況して終わったらtogettterでまとめをかくとか。何かしら話すべきことがあるなら企画を持ち込んでプレゼンするのももちろんそうだ。
何かしらコミットすると、単純にお客さんで参加するより、イベントの中身がよくわかることが多いし、主催者と話す機会もある。たいてい、イベントの発起人は何かしらおもしろい、刺激になる人であることが多いし、スピーカーを紹介してもらえたりもする。できれば自分の得意分野で何かしら無償労働すると、効果的になってうれしい。本業がまた楽しくなったりする。得意分野でパワーを出す大人が複数人集まると、全員がやりたくない受付(会場外で、イベントが見れないタイプのやつ。会場内の受付は問題ない。)とかは、「みんなで金払って学生バイトにやらせようぜ」とか、「食べ物は外注しようぜ」みたいな話になってむしろラクになることも多い。
MakerFaire深圳では、2014年の4月にはじめて深圳を見て衝撃を受けて、絶対に再訪して細かく見てこようと思った。そのとき、もと同僚が立ち上げたヤックルという会社の2人に「再訪するなら、同行したい。深圳を案内してくれ」といわれて、どうせならなるべく多く人を集めようとニコ技深圳観察会というイベントを立ち上げた。2人を案内するのも20人を案内するのも、手間はあんまり変わらない。お金を取って一から十まで世話を焼くのはイヤだけど、「僕の旅程とホテルは公開するから自腹で同行したい人はどうぞ」ならそれほど面倒じゃない。
第1回、第2回のレポートを見るとわかるけど、本当におもしろくてこういうことがないと、山形浩生さんや江渡さん、稲見先生、野尻先生といった有名な大人の人と何日間も遊ぶのは難しい。彼らが深圳でいろいろなものを見た反応は、僕が一人で回るより何倍も刺激的だった。
「おもしろそうな話を投げてタダでつきあわせる」のがプランニングという遊びだと思うのだけど、うまくいくとお金では動かない人と一緒に遊ぶことができる。本人が楽しんでなくて、「誰かのためにやってやってる」と思うと、僕の場合は精神衛生上よくないので、そういうことはやりたくない。自分がおもしろがることはとてもよいライフハックだと思う。そうじゃないと、この手の無償労働やりたがる人は、無償作品制作をやるひとがオタくさくなりがちなように、意識だけ高くなりがちな気がする。
おもしろがるためじゃなくて、世界平和のためとかに何かやるのはあんまり好きじゃない。僕が何をやっても世界を変えられるとは思わないけど、おもしろい人と遊べれば僕の世界は変わるし、それで十分だ。
一緒に行った人と仲良くなれただけじゃなくて、深圳の会社の人から見ても、30人ぐらい日本人がやってきたのは刺激的で、Seeedstudioは僕らのために観光バスを用意してくれて、案内をしてくれた。
その後、彼らがMakerFaireTokyoのために東京に来たときにはずっと案内をしたり、交流は続いている。今もよく、日本についてメッセで相談が来たりする。遊びに行ったときには試作品をくれたりもして、今のMakerFaire深圳の実行委員につながっている。基本的にはお互いやりたいことしかやってないんだけど。英語とかは、自分のために使うより他人のために使う方が脳汁が出て上達すると思う。
猪子もよく「男性は、友達でも、一緒に仕事しないと、一緒にいられない」というけど、無償労働は友達になりたい人と友達になるチャンスだ。僕がシンガポールや深圳に友達がいっぱいできたのは、一緒になってイベントの運営をしたり、彼らの活動に役に立つ(人を連れて行くとか紹介するとか)無償労働をしたからで、何にもしてないと、中年の外人のオタクに友達なんかできなかったんじゃないだろうか。
僕は寝る時間が足りないとダメだけど、ヒマまでも2chのまとめブログやはてブ読むぐらいであんまり実のある時間のつぶし方をしないから、何かしらにコミットして時間つぶしてた方が満足感ある。褒められるの好きだし。
もともと、伽藍とバザールらオープンソース三部作を読んで、オープンソースソフトウェアのありかたにあこがれみたいなものがあった。デバッグでもマニュアル作りでも著名なソフトに貢献できて、開発者たちと「仲間」としてクレジットされる。僕はソフトには関われないから、イベント的なものに関わるようにした。結果として尊敬すべきギークの友達が増えた。
そのようなわけで、さしあたって時間があってすることがないなら、何かしらおもしろそうな活動にコミットして、そのなかでやりたい無償労働をすることをオススメする。今学校でやってることが好きになれない学生なんかには特にオススメだ。オープンソースに貢献している人がその伝手で就職するように、それが、その後の将来になるかもしれない。
何でこんなエントリを書き始めたかというと、ニコニコ学会の第8回でボランティアを募集しているという話を見かけたからである。
https://www.facebook.com/etocom/posts/10203156034896509
http://niconicogakkai.tumblr.com/post/114485889176/8-more
エントリを見ると4/19で締め切ってるみたいだけど、1日2日遅れぐらいならたぶん何とかなるんじゃないだろうか。
今からだと、たぶんやることはだいたい決まってて、言われた範囲の中で何かやる自由度の少ない感じになりそうだけど、雰囲気はつかめるはずだし、見ていておもしろそうなら次は自分で何か始めてみるのはいいんじゃないだろうか。
追記:宣伝
落合さんの「日本のITが永遠にアメリカに勝てない理由」にしてもこないだのoDeskの話にしても、グローバルの話はアツいので、セッションをニコニコ学会でやります。
海外ネタはよくヒステリックに反応する人が出てきて収集つかなくなることがあるので、放送禁止の「夜のニコニコ学会」として、ニコニコ超会議初日の夜、4/25土 19:00から海浜幕張駅近くのレストランでやります。
レストランで食事つき飲み放題なのでチケットが税込6000円になってますが関係者一同無償労働で行っています。SNSでやれない質問なども受けるのでご興味ある方は是非。